韓国は実演販売の大国だ。前回は防火ワックスの路上パフォーマンスの話したが、売り物に火をつけるのはあの人だけじゃなかった。
ソール市内に イテワンというショッピングエリアというか、繁華街というか、怪しい町がある。近くに米軍基地もあるおかげで、あそこのお店は外国人向けのサービス満載だ。店員は英語もしゃべれるから、ほかより買い物しやすい。
僕が日本語検定試験一級をとったのは来日二年目の94年12月。日本での締め切りに間に合わなかったのでソールまで受けにいった。はい、バカです。
その時期は大学の奨学金も返済し終わって、生まれて初めてお金があまっていた。だから、試験が終わったらすぐイテワンに駆けつけて、おかしいなぐらい色々なものを買っちゃった。閉店になったら、僕は商品で一杯の企業用の黒いビニール製ごみ袋を二つ背負ってソールのいかがわしい街を歩いてホテルに帰った。悪質サンタクロスみたいな感じだった。
そのときの一番の買い物は革ジャン。韓国の革製品は安くて評判だった。買うときもお店の店員が熱心にすすめてくれた。
It's real leather. Best leather. You want to buy this.
となぜか、僕の気持ちまで決め付けてた。そして実演のほうに入った。
Fake leather, no good. Watch. See this lighter...
とライターをポケットから出し、革ジャンの袖に炎を与える。
Fake leather melts. Real leather, no problem! Look! Look!
本当だ!見てみると火が当たっているところはまったく無傷。僕は納得してその革ジャンを買って日本にもって帰った。家が火事になったら、革ジャンを着て逃げるつもりで。というか、革ジャンを着ていれば逃げる必要もないだろう。燃えないからね。
でも、日本にもどって、その革ジャンを着て出かけたときに気づいたのは川自体が燃えなくても、その革ジャンに使われている糸はまったく防火効果ゼロ。糸がほとんど燃えちゃったので。初めてきたとき両袖がとれて、革ジャンが革チョッキになっちゃった。
それでも3年ぐらい着用してたけどね。





