|
その日勤めていた中学校に出勤すると
一時間目の理科の教師がテレビを食い入るようにみていた。
生徒が次々と教室の席を埋めていく・・・。
授業時間が始まっても彼はテレビのスイッチを切らなかった。
テレビの画面では、飛行機が高いビルに突っ込んで火の粉とともにもうもうと煙を上げていた。
生徒たちは、いつに無く真剣な顔で画面を見つめた。
そして、ひそひそと会話を交わし何が起きているのか理解し始めていた。
一時間目の授業は無かった・・。
2時間目のチャイムが鳴っても誰も席を立たなかった。
2時間目が始まると校長先生のアナウンスが全校に流れた。
「今日は、ニューヨークで痛ましい事件が起きました」
「速やかに下校してください」
アナウンスは、必要以上のことは何も伝えなかった。
誰もが家に帰ると やっぱりテレビのスイッチを入れた。
どのテレビ局も同じニュースを繰り返し繰り返し伝えていた。
わたしは、息子の帰宅の気配にテレビをあわてて消した。
帰ってきた2年生の息子がわたしに尋ねた。
「ねえ!なんで帰ってきたんだと思う?」
「高いビルに飛行機が突っ込んだんだって!」
低学年の息子には本当の事の重大さなんかわかってやしなかった。
いや、アメリカ国民のほとんどは息子と大して変わりはしなかった。
次の日になるまでは・・・。
ただ、何か大きな歯車がギシギシと音を立ててずれ始めていることだけは確かだった。
|